もうすぐ百の猿になる。/田中宏輔
 
場合、自分の声のなかに、血のつながりのあるものの声が混じっていることは、はやくから気がついていたのであるが、あるとき、ひょんなきっかけから、自分の声のなかに、血のつながりのないものの声も混じることがある、ということに気づいたのである。これもまた、ぼくが詩を書きはじめて間もないころのことで、親友の歌人である林 和清と電話で話をしているときのことであった。『引用について』というタイトルの論考を、雑誌の「詩学」に出すことになって、その下書きをファックスにして送り、いっしょに検討してもらっていたときのことであった。三時間近くしゃべっていたと思う。長い時間、電話で話をしているうちに、林の声のなかに、ぼくの声
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