たとえばこんな朝の来ない街をみおろす悲しみの夜の果てに/秋葉竹
たとえばこんな朝の来ない街をみおろす悲しみの夜の果てに
その夜は山に登った。
みおろすと日の出のまだの夜の街に、
穏やかで幸せな眠りが訪れており、
すこしでも起きているそこここには、
ポツンポツンと電灯が灯っていた。
あのあたりに家族が眠り友だちかが眠り、
僕はすこし寒い山腹に立っていた。
ホモサピエンスがこの街を征服したのに、
街なかにひとは満ちたり群れたりせず、
恋愛とか家族にすがる家なかで眠る。
偶にバベルの塔みたいな建物の屋上が灯り、
動いている光はトラックのヘッドライトか、
巨大な蛇のジィーッと光るまなこなのか。
人口の三分の一が餓死した歴史を持つ世
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