駆け抜けたい/秋葉竹
ぎ
すこし淫猥な夜の街の空気も
ざわわわわと
波打つ美しい幻の渦となり
そのなかを楽しげに
泳いでゆくあのひとは
きっと魚の呼吸をしているんだ
珊瑚の静けさ
眠りにおちる海の底の世界たち
目を開いたまま眠る魚たち
すこし羨望の目でみられる
トビウオみたいなカッコよさが
なにを犠牲にして得たものか
知ってしまっている乾いた過去が
鎮まれ鎮まれとさわさわとゆうるりと
泣きそうになった心を撫でる
海からみあげた満月は
まるでグリーンアップルみたいだって?
だから今夜この街からみあげる満月は
まるでグリーンアップルみたい
街は眠らないでどんどん
明るく
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