引用の詩学。/田中宏輔
 
それは
霊感にかかわる一切のことばの定めである。
(J・L・ボルヘス『月』鼓 直訳)




 ボルヘスのこの言葉から、つぎのような言葉が思い浮かんだ。どんなにささいな行いのなかにも、本質的なものが目を覚まして生きている。




──お前の中にあって、今ものを云っているのは、
滅びゆくお前の中の滅びない部分なのだ。
(バイロン『カイン』第一幕・第一場、島田謹二訳)




 バイロンのこの言葉から、つぎのようなことを考えた。展開し変形していく数式のなかで、保存されているのは、いったいなにか。法則が保存されているというか、法則のなかにおいて数式を展開し変形して
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