引用の詩学。/田中宏輔
(ジェイムズ・メリル『イーフレイムの書』U,志村正雄訳)
メリルのこの詩句が、いかに自由な精神から書かれたものか、想像するしかないが、かなりの自由度を有した精神が書いたものとしか思われない。ここまで自由になるには、よほど深い思索が行われなければならなかったはずである。ぼくの精神がメリルのような自由度をもつためには、あとどれだけ知識を吸収し、思索をめぐらせなければならないか、これまた想像もつかない。しかし、先人がいるということは、それにつづけばいいだけで、先人が苦労して獲得したものを、後人は、先人より容易に入手できる可能性が高い。先人がいるということを知っているだけでも、エネルギ
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