引用の詩学。/田中宏輔
 
うだった。




 感情の発展過程で、ある点以上には絶対成長しない人がある。かれらは、セックスの相手と、ふつうの気楽で自由な、そしてギブ・アンド・テイクの関係をほんの短いあいだしか続けられない。内なる何かが、幸福に耐えられないのだ。幸福になればなるほど、破壊せずにおけなくなる。
(フレデリック・ポール『ゲイトウエイ』20、矢野 徹訳)




 フレデリック・ポールのこの言葉から、つぎのような文章を思いついた。いまある幸せがいつかはなくなるものだと思って、あるいは、いまつかまえられるかもしれない幸せをいつかは手放さなくてはならないものだと思って、そういう不安なこころ持ちで生
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