エイフェックス・ツイン、永遠に(改稿)/由比良 倖
れが心地いい。三十歳。今までの十年間、彼女は取り立てては、本当に何もしてこなかった。殆ど何も書いたことがないし、絵も描かない、音楽は、ギルドの安いギターを買って、少し弾き語りめいたことをして、すぐにやめたし、パソコンもインターネット以外では全然活用してなかった。Yと会ってから、踊ることもしなくなっていた。けれど三十歳になり、彼女は何か、何か表現出来るものが欲しいと思った。音楽でも、文章でも、絵画でも。今から始めるのに、遅いということがあるだろうか。それは全然無いだろう、と彼女は思った。「書きたい」と生まれて始めて思った。音楽をやりたい、とも。それは、彼女がまざまざと辺境の空気の中に、今立っているか
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