エイフェックス・ツイン、永遠に(改稿)/由比良 倖
向こうに垣間見る。
シンプルであること。
シンプルであること。
シンプルであること。
彼が死ぬまでは思いつきもしなかった。彼女は古いパソコンを出してきて、電源を入れる。ワードパッドを開き、白紙の画面と、点滅するキャレットを見る。私が欲していたもの。私が手に入れたかったものは、これかも知れない。それからインターネットの楽器屋で、マルチトラックレコーダーと作曲用ソフトの値段を調べる。思っていたより安い。それからチープなドラムマシン。彼女は、日々、刻々と老いていく。三十歳。白い歳だ。それから、クローゼットから古いアコースティック・ギターを取りだしてきて、ヘッドホンを外し、Dの音を一音鳴ら
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)