エイフェックス・ツイン、永遠に(改稿)/由比良 倖
頭を叩き付けられて死ぬ瞬間、彼には何か分かっただろうか?
沙恵は再び踊っている。眠るように。
「生きることは、もっと、もっと本当は、シンプルだったはずなのにね」
沙恵は誰にともなく呟く。彼女はスピーカーのスイッチを切って、ヘッドホンを着ける。それから椅子に座り……あり得べきはずだった人生の、可能性について思いを馳せる。
踊り疲れたけれど、汗は掻いていない。自分が本当に疲れているのかも分からない。泣きたくなるような一瞬を飲み込み、沙恵は引き出しに入っていた風邪薬を十錠、まだグラスに残っていた水で飲む。唐突に彼女は、単純な生きる「時間」の成り立ちが、この世界に具現化された姿を、目蓋の向こ
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