エイフェックス・ツイン、永遠に(改稿)/由比良 倖
も最初には動物園に行きたい、と言ったからだ。彼が行きたいと行ったのに、彼は象しか見なかった。だから沙恵はひとりで九官鳥やシロクマや猿山を見て回った。でも彼はかなり満足そうだった。彼の理屈によれば、象だけでも本当に見るには一時間はかかるらしい。そう言われてみると、沙恵は自分が何かを見て、そして何も見てきてはいないような気がした。
Yはしょっちゅう「世界が分からない。世界に触れられない」と言っていた。「でも、死ぬときになれば、絶対に……」とも言っていた。でも彼の死のイメージは、おそらくベッドの上で徐々に迎える死だろう。自分の死を意識すれば、何かが分かるかも知れない。暴漢に襲われ、コンクリートに頭を
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