エイフェックス・ツイン、永遠に(改稿)/由比良 倖
りの装飾品として、彼女が身に着けているのは胸元辺りまである長い髪の毛と、いつか彼がくれた白い腕時計だけだ。
許されるなら、彼女にはやりたいことがあった。三十歳。まだまだ若い。若すぎる、と彼女は思う。人生を終えるには。
このまま、死ぬのかな、と彼女は思う。と言って死ぬ宛ては無い。
デスクの上に置いておいたシートから睡眠薬を二錠取り出して、グラスに入った水と一緒に飲む。部屋の中には、デスクの上にも、床の上にも本が散らばっている。本はもう、彼女にとって何の意味も持たない。心配して家を訪れてくれる人がいないことも優しかった。彼女は心置きなく、人のいない領域にいられた。そうしていると、まだ彼が生
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