風の頁/岡部淳太郎
 
ひらひらと、頼りなく風に吹かれて、煽られて、めく
れる頁、めくれる言葉、歌になる言葉、歌が記された
紙片、ただの頼りない、薄いいちまいずつの紙が、そ
こに言葉が記されてあるというだけで、どこか尊いも
ののように錯誤される、たとえそれが、意味を纏った
言葉や、蛙の子のような音の元となるものであったと
しても、それはりかいされ、愛唱され、夢のなかで口
ずさまれることすらある、また風が吹いて、吹き飛ば
すほどでもない、そよそよと、他人のようなよそよそ
しさで頁をひるがえらせ、そのせいで、どこまで読ん
だのか、どこまでりかいの戸口に立たせたのか、わか
らなくなってしまう、すべてのうた
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