風の頁/岡部淳太郎
 
うたはむいみ、あなた
を思う夢精のような白い汚らわしさも、あなたにりか
いされない、無声のような慟哭も、うたになってしま
えばすべてむいみ、日々のなか、くだらないものとし
て処理されてしまう、また風に乗って、いちまいの花
弁のような湿潤が、あるいは枯葉のよう乾燥が、飛ん
できました、ひらひらと、便りもなく伝えようとする
ふかのうな伝達、風に吹かれて、めくれる頁、めくれ
る言葉、めくれる情感、おんなのみにすかーと、男の
禿げた頭部、それらも結局はざんこくにも歌になって
しまう、だから僕等は、それらの風の頁を、めくれて
しまわないように、飛ばされてしまわないように、し
っかりと抑えて、僕等じしんが風、ただの吹き過ぎる
風、めくれてしまう歌、その頁に過ぎないのだから、



(二〇二四年四月)
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