空白の歌たち/由比良 倖
 
死ぬか、それともウォークマンの電源を求めて、永遠に彷徨い歩くか。
どちらも同じことかもしれないけれど。


あらゆる人は、沈みゆく都市を持っている。
岩場や寂しい季節を持っている。
私たちは、海底で笑い合いましょう。
死にゆく人たちを見て、海を弔い合いましょう。


《私は私の墓を見付けました。》という
《私は睡眠薬を飲みました。》という
そんな簡単な言葉さえ出てこないのです。
私はいつでも起きています。
私の墓を見せることが出来たなら、あなたは花を、
孤独の言葉を供えてくれますか?


私は「私」という言葉から自由になりたいだけ。
誰よりも孤独でいたい
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