空白の歌たち/由比良 倖
 
何か、多分風に似たものを感じる。


不安の無い世界で会いましょう。
私はギターの地図を持っていて、
あなたはピアノの地図を持っている。
部屋はとても四角くて、そこに白い陽が差して、
ガラスのような心拍を、
私たちはふたりで見詰め合っている。


ギターが一音ずつ揺れている。
脳/細胞に共鳴する酸素。
ただ光る波としての私を勝手に見ててもいいし、
誰も見てなくても平気。
宇宙の光や星の粒と、同じ呟きを、
手のひらの窪みに載せて。


少し楽しくて、全て繋がっているのはどうしてなんだろうと脳裏でテレパシーみたいに、私の心身が交信し合っている。
多分、誰か
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