空白の歌たち/由比良 倖
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雨に濡れた日傘を差して歩いていると、情緒がぐんぐん押し寄せてくるようです。街でも孤独になれるイヤホンは、私の防護壁にして武器です。私はひとりでなければ決して生きられない。あらゆる場所に孤独のスペースが無ければ私は窒息してしまうでしょう。
部屋に近付くと、段々生温かいゼリーに包まれていく私の身体。知らない方が良かったことはとても多いけれど、けれど私は魚から少しも進化していない。いまだに背骨と心臓だけが私の本質です。蝶だとか花だとか、知ったことではありません。何にでもなれそうな気がします。当然私は何もかもなのだから。
武器としての言葉が欲しいです。早く、早く、再び私は私の底に行きたいの
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