空白の歌たち/由比良 倖
 
いのです。社会に出て行けない私は、私の底の底にしか生の方向性を見出せない。けれどそこには、底には全ての生者と死者がいて、私は、人は、そんなに自分自身だけで出来上がっている訳ではないと知るのです。
誰よりも遠く、そして悲しい場所へ。悲しみの鈍い音……人と会ったあと泣きたくなるのは、人の名残が身体にあるから。無感覚さを立て直すための他人。けれど彼らに頼ってはいけない。永遠が私の身体をさらってゆくまで……神さまにも困ったものです、私に生活を与えながら、私が生活をなげうった時にだけ、天国を見せてくれるのだから……私はヘッドホンに籠もります。……私は私がいなくなる瞬間だけを求めています。会いたいな、という
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