石蝶夢/ただのみきや
 
耳に舟を浮かべ

歩調乱して舞う春の

袖の桜に


つややかな

丸石を

箱に収めたまま


誰が挟んだ栞だろう

蝶は飛び

青き幕間に


  *

くびれていく卵

見つめられて夏になる

寝汗の中で開花した

殻の内壁は隙間なく七色の

血の繚乱 雛嵐

そうして生も死も得ないまま

うたは涸れ 呪詛は乾き

空耳ばかり殷々と


  *

鈴を振る

白い手が 

手首だけが

月のよう


こころはだけ

抱く首に

まつわることば

鋏で断って


すべらかな
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