読点。/田中宏輔
 
い読点も
渇いた読点も
濡れた読点もある。
気体の読点や
液体や固体の読点もある。





宇宙中にあるすべての読点を集めても


コップ一個を満たすこともできないと言われている。





草野心平じゃあるまいし


人民たちが句点や読点に飢えていると耳にした王女は
疑問符や感嘆符やその他の記号で十分じゃないの
と言ったという。
その顔には幼な子のような笑みを浮かべ
その手のなかでは句点や読点をもてあそびながら。





リルケの遺作『ミュンヘンにて』を読んで


亡くなってから小部数出版されたというのだけ
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