語の受容と解釈の性差について──ディキンスンとホイットマン/田中宏輔
親しく知らない人間や事物の記憶を呼び起す
(ユイスマンス『さかしま』第十四章、澁澤龍彦訳)
ここで、ふと、ボードレールが、自分の母親宛てに送った手紙の言葉が思い出された。引用してみよう。
僕は、信じ難いほどの共感を僕にひき起こした一アメリカ作家(割注 エドガー・アラン・ポオ)を見つけ、そして僕は彼の生涯と作品とについて二つ記事を書きました。それは熱を込めて書いてあります。だがきっとそこには何行かいくらなんでも異常な興奮過度の個所が見つかるでしょう。それは僕の送っている苦痛に充ち気違いじみた生活の結果です。
(ボードレールの書簡、母宛、一八五二年三月二十七日土曜日午後二時、阿部良
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