手遅れの手前/ホロウ・シカエルボク
 
上げた金額を払った、金を手渡すとき女があら、という顔をした、帰ろうとする俺を呼び止め、ティッシュをどこかから取り出して俺の指を拭いてくれた、「すみません、血が出ていたものですから」俺は自分の指を見た、ああ、ごめん、と俺も詫びた、「たいした怪我じゃないんだけど」良ければ張ってあげましょうか?と女は続けた、「ご自分で張るの大変じゃないですか?」ちょっと、と隣の男が割って入った、「仕事じゃないことまでしないでくれますか?叱られるの僕なんですから」男は心底ウンザリしているように見えた、あら、ごめんなさい、と女は笑顔で答えて、それから俺の方を見て、それで、どうします?と尋ねた、男は舌打ちをしてバックヤードへ
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