孤独な口づけ/鳥星
けた。睡眠欲を押しのけ、時折、ガードレール等に腰かけて詩を書くのが好きだった。自分だけの楽しみ、自己完結された狭い世界の中で、僕は生きていた。夢がなかった。目標がなかった。愛が分からなかった。貧しかった。何のために生きているのか分からなかった。遠く遠く足を運び、知らない街から知らない街へ辿り、夜明けの薄青色の光に街が少しずつ染まる頃、僕は疲れ果て、今度は踵を返して何時間もかけて帰宅するのである。そして朝の光の中で、柔らかな布団の中に包まって、眠りにつく。それが幸せだった。行き場のないエネルギーに狂った心が、それだけで宥められた。僕は片親で、母親しかいなかったが、母親は精神病院に入院していて、家の中
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