孤独な口づけ/鳥星
遠い存在から身近な日常の中に知覚するということ。想像力は、人並み程度に、否、少しだけあればいい、微量でいい。皆無でも構わないかもしれない。事実の前に、全ての想像力は容易くのたうち回るのだから、汝は想像力の無力さを思い知るべきである。そもそも僕は想像力の欠片もない無能なのだから、これからは僕の人生における思い出の数々をただ書き写すだけの作業に入るだろう。
どうして心を閉ざしているの? と昔の彼女に問われたことがあった。何人目かの彼女だった。彼女の姉の車の中で二人きり、一つ歳上の彼女に、どうして心を閉ざしているの? と問われたことがあった。僕は、心を閉ざしていないと答えた。深夜3時だった。彼女
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