鏡像 【改訂】/リリー
して母親の施設への入所を決断した娘の選択は、それを拒否しな
かったという母の選択でもあったのだろう。
「明るい部屋やな! 南向きで最高やん」
「うん。落ち着くし、いいやろう!」
二階の玄関の扉を開けてキッチンの床へ買い物袋を置き、ワンエル
ディーケーを見回す私へ誇らしげな笑みを返す彼女。
「大家さんも優しくて、いいご夫婦なんやんか! あたし、ついてた
わ」
「大家さんが、いい人なんは何よりやなぁ!」
一時間程して小さな炬燵の鍋敷には、煮えているすき焼き鍋が運ばれて
来る。
「さあ! では、いただきましょう!」
友人が冷蔵庫から出したロング缶のビ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)