音のない雨/ホロウ・シカエルボク
た方がいいような場所さ、沢山の室外機、こんなものが本当に必要なのだろうか、生活が快適になればなるほど流行病は癖が悪くなる、どれだけの人間がそのことに気付いているんだろう?本当に浄化された世界で過ごすべきだと言うのなら、もはやエアコンや空気清浄機の完備された部屋から一歩踏み出すことさえ出来ない、幾つもの羽の稼働音と生温い風、どこかの窓から聞こえてくる下らないポップソングを歌う素人たちの歌声、我知らず「雨を見たかい」を口ずさんでいる、上着は濡れてしまったけれど滴るほどじゃない、手で掃えば忘れてしまう程度の雨粒、それは降ったり止んだりしている、踏ん切りのつかない女みたいに、ここから見えているプロパンガス
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