violet/パンジーの切先(ハツ)
じて、わたしを無視する。そして、その理不尽は、誰の上にも何の前触れもなく、シャワーと同じく降り注ぐものだった。
ただ、真夏の坂道、学校からの帰り道、まだわたしの背丈はとてもちいさくて、初めて出会ったあの子は、膝を赤黒く擦りむいたわたしへ、しろい絆創膏をさしだしているのに、何がこうもわたし(たち)をおかしくさせたのか。
先程よりは少し軽くなった身体を湯からあげて、髪を洗って、身体を洗い、最後に湯を抜く。かさを減らしていく紫色の湯を見ていると、わたしの記憶もこうやって少なくなればいいのにと思う。小学生のころ、文通をしようとわたしから、もちかけられた男の子は、こっそりとそれに応じてくれていた。彼
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