violet/パンジーの切先(ハツ)
。ただ、バキボキの身体を浸すのにしかたなく、捨てるほどではないと置いていたバスソルトをつかうだけのことで、これはちがうこと。わたしの意思とはかんけいないことだ。
バラバラと粒を撒かれた浴槽ぜんたいがあわい紫になって、底は少し濃い。熱い湯をすくい、身体をかるく流して、わたしはゆぶねにはいる。浴槽から立ち上る香りはわたしを抱きしめて、蹴り上げて、すべてを包み隠して、(ともだち)にしてしまうように甘かった。violetの可憐な香りから、わたしに想起されるのは、すみれちゃん。
すみれちゃんは、わたしのすべてだった。わたしは、12歳の終わりまで、熱狂てきに、すみれちゃんという同級生を慕っていた(よう
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