surely/中田満帆
 
ねってさ
 でもおれもまた通り過ぎるんだ、退場役のエキストラのひとりだってことに気づく
 そして多くの物語が中断された路地をあたりまえのように去ってしまうんだ

 だれのものでもない両足でおれを傷つける
 自分自身を獲られない躰でもって、
 あしたが祝祭であるかのようにふるまいつづける
 人形の家に灯りが点りはじめた
 むかいの養老院で人生を終える老人たちの幸福さに焦らされ、
 じぶんの顔を忘れてしまった一瞬を
 スクリーンに投影しつづける
 きのうことはぜんぶ憶えている
 きみに話したように憶えている
 それでもきみはきみを守り通しているんだ
 かの女がいうんだ、──
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