『夢幻空花』 一、 此の世界の中で/積 緋露雪00
、例えば、前日矛盾であったものが、新たな論理を見出した結果、矛盾でなくなる事象を何度見てきたことか。然し乍ら、私はまだ、他力本願の境地にはほど遠く、此の世界に全的に身を任せることに恐怖を感じてゐる。なるやうにしかならぬとはいへ、それを金科玉条の如くにする恐怖は、世界の残酷さを身をもって体験してしまったから、その残像が消えぬまま、私は平穏無事な日常をびくびくしながら過ごすのだ。世界はある日突然、牙を?き、存在を襲撃し、死に飢えた死神のやうに死者を死屍累累と堆く積み上げる。その死んだものたちの、そして、生き残ったものたちの怨嗟が此の世に充溢してゐて、それは時間が長く長く流れることで最初の衝撃的な針が振
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