『夢幻空花』 一、 此の世界の中で/積 緋露雪00
事実である。世界は不合理である。世界は節度あると看做すことは世界を買ひかぶってゐてそれは身を滅ぼす因になり得るのだ。
だから、この美しい世界において、大人(たいじん)でない私は日常をそれが終始平穏無事であらうとも右往左往して過ごすことになる。此の世界が好きといひながら、私は結局の所、此の世界を心の底では信じてゐないのである。なんと矛盾してゐることか。しかし、存在はそもそも矛盾してゐるものである。矛盾してゐるからこそ、此の世界に存在を許されてゐるのだ。果たして矛盾してゐない存在は存在してゐるのだらうか。どんな存在もその内部では矛盾を抱えてゐてその矛盾を矛盾から解放しやうとして日常を生き、例
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)