漁師の家 うつくしい硝子/R
着る物や鞄 細々した雑貨なんかを
おばあさんの不用な品や島の名産品と共に
海色の軽自動車へどんと積みました
それから私たちは稚内行きのフェリーにゆられ
まるまる太ったカモメにかっぱえびせんをやりながら
島のこと おばあさんのこと
持ち出せなかった昭和や食べそびれた伝統
それらに連なる 過去と未来について
春先の寝ぼけた蝶のように話しておりましたが
次におばあさんと会ったのは数年後の私たちの家でした
息子と青森へ引き上げる途中に立ち寄ってくれたそうで
これまでのこと これからのこと
限られた滞在時間に詰め込まれてゆく ありったけの言葉から
私の漁師の家はいたみも
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