鏡像 【改訂】/リリー
 

 どっちが介助されているのか、分からない。
  老人ホームの午前の日課は、館内清掃と洗濯。入社三年目で腰椎椎間板症
 を患い、広いお便所掃除や長い廊下のモップ掛けは、きつい労働になってし
 まっていた。米田さんと施設からエスケープ出来る時は、私にとって安らぎ
 だった。
  米田さんには日頃から身辺へ目配りが必要で、昨日も廊下にいて他の入居
 者さんと談笑する彼女を捕まえる副主任。
 「ちょっと米田さん、洗濯場にバケツ放りっぱなし! バケツん中で、洗濯
 物乾いたあるやないのっ」
 「あ、忘れてたわあ! 干しといて」
 「何言うてんの! 自分でちゃんと干しなさいよ」

 
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