鏡像 【改訂】/リリー
どっちが介助されているのか、分からない。
老人ホームの午前の日課は、館内清掃と洗濯。入社三年目で腰椎椎間板症
を患い、広いお便所掃除や長い廊下のモップ掛けは、きつい労働になってし
まっていた。米田さんと施設からエスケープ出来る時は、私にとって安らぎ
だった。
米田さんには日頃から身辺へ目配りが必要で、昨日も廊下にいて他の入居
者さんと談笑する彼女を捕まえる副主任。
「ちょっと米田さん、洗濯場にバケツ放りっぱなし! バケツん中で、洗濯
物乾いたあるやないのっ」
「あ、忘れてたわあ! 干しといて」
「何言うてんの! 自分でちゃんと干しなさいよ」
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)