鏡像 【改訂】/リリー
ングが
行なわれる旧館の寮母室へ急ぐ。途中、外廊下で食堂ホールに面した中庭の
芝生が、時雨で濡れ始めていた。
「寮母さん、寮母さん」
ミーティングの後、入居者の米田さんを伴いタクシーに飛び乗って間も無
く、後部座席でフロントガラスに揺れるワイパーの雨しずくを見ているうち
眠りこてしまった。
「もう着くで」
私の肩を叩き、起こしてくれた彼女は筋ジストロフィーの初期症状で月に二
度通院している。総合病院への付添業務は、予約受診でも午前中いっぱいか
かってしまう。
「あんた、疲れてるんやなぁ。かわいそうに」
「ありがとう。近ごろ眠れへんのです」
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