鏡像 【改訂】/リリー
 
ングが
 行なわれる旧館の寮母室へ急ぐ。途中、外廊下で食堂ホールに面した中庭の
 芝生が、時雨で濡れ始めていた。

 「寮母さん、寮母さん」
  ミーティングの後、入居者の米田さんを伴いタクシーに飛び乗って間も無
 く、後部座席でフロントガラスに揺れるワイパーの雨しずくを見ているうち
 眠りこてしまった。
 「もう着くで」
 私の肩を叩き、起こしてくれた彼女は筋ジストロフィーの初期症状で月に二
 度通院している。総合病院への付添業務は、予約受診でも午前中いっぱいか
 かってしまう。
 「あんた、疲れてるんやなぁ。かわいそうに」
 「ありがとう。近ごろ眠れへんのです」
 
[次のページ]
戻る   Point(5)