鏡像 【改訂】/リリー
 

 薬が投与された。対症療法的薬物投与である。
  胃薬だ、消化剤だなどと言われ飲まされる薬の副作用で、やがては足腰ま
 で弱っていってしまう。岡本さん自身の人格的問題だけでなく、これが彼女
 の寿命を縮めてしまう事になったのだ。

 「はい、どうしたんですか? 石野さん」
  食堂ホールのアコーディオンカーテンは閉まったままで、もう大勢の人が
 待ち合いフロアにいる。私を手招きする石野さんの車椅子へ、膝を折り目線
 を彼女より低くして寄り添う。舌の上手く回らない石野さんは、口籠もりな
 がら優しい目をして、お風呂が気持ち良かったと話してくれるのだ。
  この日、シフトの遅出
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