鏡像 【改訂】/リリー
遅出勤務だった私は、夕食の介助と夜のオムツ交換に携
わる。
石野さんは、私のことを長浜にいらっしゃる妹さんだと思っている様だっ
た。九十歳近い石野さんにとって、若い私が妹であるという事は……彼女自身
いつの時代を今、生きているのだろうか?
食事中に私が、彼女のテーブルを離れ別の人の介助に付くと、食事を終え
て病室へ戻る時いつも私を睨んで怒るのだった。
寮父が宿直業務に就いた日の朝礼で、報告された石野さんのオムツ交換時
の、激しい拒否と抵抗。
「こんな状態ですわ……」
彼の腕には、ユニフォームの袖口から見える赤い引っ掻き傷。女性としての
アイデ
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