鏡像 【改訂】/リリー
 
あんたて
 無理かもしれへんなぁ……。そんっだけ理想が高かったら」

  館内清掃から旧館一階の寮母室へ戻って来ると、廊下に聞こえる馬場さんの
 憤る嗄れ声。
 「ほっといてくれ!」
 「そういうわけにいかへんでしょう」
 「出て行ってくれっ!」
 馬場さんの居室から出て来た四十代の先輩と入れ替わって、副主任が引き戸を
 閉める。皆はチーママからの連絡事項を確認し、私も病室へ向かおうとした。
 その時、四十代の先輩は、
 「このお膳、下げてちょうだい」
 居室のドアを開ける副主任に呼ばれて、配膳してあった口のつけられていない
 朝食トレイを受け取り、身体を清拭するタオルを
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