鏡像 【改訂】/リリー
 


  施設の入居基準は、自立した高齢者であるが入居者の高齢化による施設の
 「特養化」が進み、当時でも市の特別養護老人ホームの入所待機者状況は、
 二百名を超えていた。施設の人員体制は「養護」のままで、深刻化する人手
 不足。
  入居者一人一人の想いや自由な暮らしを尊重したくても、それが理想と
 なってしまっていたのだ。



第三章 「メモワール?」


 「あだちぃ、病院行ってきたんか?」
 「うん、K産婦人科。やっぱり子宮内膜症やて言われたわ。早く結婚して出
 産したら治るってさ」
 「それが、難しいんやんなぁ!」
 「そうそう。先生さ、簡単に言わはる
[次のページ]
戻る   Point(5)