鏡像 【改訂】/リリー
 
かった施設現場に男性も加わってきた。

  国のさまざまな制度改革がなされる一歩手前の、まだ現場で働く者達の実
 態が、厚い壁の向こうにある過渡期であった。




  第二章 「メモワール?」


 「皆さん、お早う御座いますぅ!」
  老人ホームの新館二階、自立した一般の入居者達が住まう棟で午前七時の
 チャイムと共に廊下を通り過ぎていく私の声。
 「おはようさん!」
 居室のドアを開ける斉藤さん、
 「今朝は、あだっちゃんのソプラノやなぁ」
 エプロン姿の似合う彼女は、笑いかけてくれる。
  養護老人ホームとは、介護の必要性に関係なく環境的、経済的に在宅で
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