鏡像(16)「寮母さん」/リリー
った
私達下っぱ連中は、大食堂ホールの大窓の硝子に映り込む
中庭の碧い芝生を松に例え
ここを『松の廊下』と呼んでいたのだ
お便所掃除を済ませ担当の病室へ出向くと
先輩がニシさんの水分補給に
介護用ベットで上半身を起こしていた
月に一度の通院以外は病室で眠っているニシさん
食事も流動食なのだが 少しでも離床出来るように
車椅子で食堂へ移動してもらっている
痩せこけて言葉も無く無表情
ただ一言、小声で「ありがとう」だけは
いつも言ってくれる人だった
「この間、娘さん来た時のニシさんの顔、あんな顔、
私らに見せてくれた事無いよな
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