鏡像(16)「寮母さん」/リリー
 
よなぁ…。」
 寮母室でそれとなく先輩二人が話し始める
 「そうそう。私らは、毎日を共に過ごしてても越えることはない、
  『寮母』なんよ。一年に二回も面会に来ない娘さんでも、
  私らよりニシさんにとっては…。そういう事やなぁ。」

 この娘さんとニシさんの親子関係の経歴までは分からない
 
 娘さんはニシさんが亡くなると預かり金七十万円を受け取り
 葬儀も納骨も全て施設側へ丸投げして涙も見せず
 老人ホームを後にした
 
 集会室で葬儀の祭壇へ参列する職員達の
 言葉にならない やるせなさ
 「寮母」とは何なのか?
 考えながらもこの時、答えを求めようとはしなかった

戻る   Point(5)