河原で石をひろう人たち/菊西 夕座
 
河原で石をひろう人たち

   貴方に触れない私なら 無いのと同じだから
                鬼束ちひろ『流星群』

蔵王の河原で石をひろう神の子たちがいる
名もない石に名前をつけては聖別し、祝福している
花崗岩にまじる玄武岩のくちづけと涙の痕跡
孤独な私もまた、光がなければ久遠の闇にすぎない
ただ私であると明かしてくれるのは、あなたの眼差し
闇によりそい、闇にかさなることがやさしさならば
やさしいあなたの温もりは、あまりにも悲しくせつない
ならば私に溶けこまないで、強くはげしく耀いて飛べ
いま私があると彫刻(あか)してくれるのは、あなたの一刀
愛はこの身を
[次のページ]
戻る   Point(5)