河原で石をひろう人たち/菊西 夕座
 
身を燃やすことでしか漆黒に星を灯せない
砂塵が吹きぬける黄灰色の荒れた山肌をくりぬいて
光彩陸離たる緑の静寂(しじま)が湖面をひたしている

蔵王の火口で星のかけらをひろう鬼のみなしごがいる
秘められた情念を歌託(かたく)し、愛惜している
マグマから冷えてなお、愛をかたどる沈黙の石
闇にほのめく蛍こそ、私がとめたあなたの勲章
すべてを刹那にとじこめて、蛍の地球も化石にかわる
時の流れにけずられたふるえる惑星と太陽が
宇宙の氷河ではちあわせ、ゆわえた抱擁を
「8」(や)のようによじれても互いの円を別かたず生きよう
《今夜君の部屋の窓に星屑を降らせて音を立てるよ》
黒衣をまとう歌姫が火口の窓に青信号をうたわせる
この身が砂塵にくずれても、いつか出会える8(や)の字のループ
蔵王の河原で石をひろう神の子たちがいる

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