あなたのかたまり/パンジーの切先(ハツ)
 
例とその数にびっくりすることはあっても、本当に忘れられないことなんて一つもない。二十一のときには、忘れられない女のひとがいた、わたしはそのひとのことをたくさん書いた。詩にした、散文にした、たくさんの、わたしの(書いた)彼女がまだインターネット上にはいる。わたしにとって、忘れるとは、書いて、書いて、全部を物語にして泣くことだった。セラピーなんかにもならないくらい落ち込んでぐるぐると、虎がバターになるくらいぐるぐるぐるぐるおなじところを回って、つかれ果てて倒れて、でもわたしはやめなかった。ずいぶんとすり減らし、たくさんの傷をつくって、手脚は何かをつくったり歩くためではなく、転げおちるためにだけ大きく広
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