鏡像(5)「あだっちゃん」?/リリー
 
 「寮母さん、寮母さん。」
 タクシーの後部座席でフロントガラスに揺れるワイパーの
 雨しずくを見ているうちに眠りこけてしまった私を
 「もう着くで。」
 肩を叩き 起こしてくれたYさん

 彼女は筋ジストロフィーの初期症状で月に二度
 通院なさっており、その付添い業務である
 総合病院は予約受診でも午前中いっぱい費やしてしまう

 「あんた、疲れてるんやなぁ。かわいそうに。」
 「ありがとう。近ごろ、眠れへんのです。」
 どっちが介助されているのか、わからない
 Yさんの担当である私にとっては安らぎの時間だった

 老人ホームの午前のカリキュラムは館内清掃と洗濯

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