鏡像(5)「あだっちゃん」?/リリー
 

 入社三年目で腰椎椎間板症を患っており
 広いお便所や長い廊下のモップがけは
 きつい労働になってしまっていた

 Yさんは常に身辺へ目を配る必要のある入居者
 「ちょっと、Yさん。洗濯場にバケツ放りっぱなし!
  バケツん中で、洗濯物乾いたあるやないの。」
 廊下で他の入居者と雑談中の彼女を捕まえて
 声を掛ける副主任

 「あ、忘れてたわあ!干しといて。」
 「何言うてんの!自分でちゃんと、干しなさいよ。」

 介護保険制度が導入される以前の「寮母」とは、
 専門知識を修得し現在の国家資格取得する職員と違って
 近所のオバちゃんに似た存在だったのだ
 
 「ただいま。戻りました。」
 「お疲れさん!早く、昼食済ませて入浴介助の誘導頼むで。」
 昼食後の寮母室は、午後からのカリキュラムですでに忙しく
 曜日制で各棟の入居者が入浴出来るようになっていた

 風呂場で洗髪や身体を洗う介助の当番だった、あだっちゃん
 大浴場へ行く前に私は、
 脚が悪い為一階に住まう一般入居者のUさんの部屋を
 こっそり訪ねるのだった
 
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