のらねこ物語 其の二十九「雪景色」/リリー
を傾げる
「あ、あの鳥!また鳴いてる。」
嬉しそうな顔を手代へ向ける御坊ちゃま
「はい。御坊ちゃま、うぐいすでございますねえ。」
近江屋の隣のお屋敷に見える
小ぢんまりした竹林 鶯の鳴き声は
青く澄みとおる空に立ちのぼってゆくのであった
「おりん。これ、さっき支店の丁稚どんがお使いに来て、
こっちはあんたにって。清吉さんからだろ。」
縁側へやって来た おきぬの目は笑っていた
手渡された薄っぺらい茶封筒を懐中に蔵うと急いで
女中部屋へ走る おりん
それを衣装箱の着物の上にそっと置き蓋を閉めて
また仕事に戻る
三年前に開店した新店舗
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