日記、メモ/由比良 倖
 
辿り着く。

 僕にはパソコンとキーボードがあればいい。そしていつかは、それさえも捨てられればいい。ただ一点の今だけに集中していればいい。一瞬にして永遠の、そしていつも完璧に同一の今。

 血のにおい。木製の、分裂するハチミツみたいな機械。

 明日は晴れるらしい。鬱屈した気分が良くなってくれるといいのだけど。



2月17日(土)、
 僕、は、この小さな領域から出たくない。「そこ」はとても、広大だから。

 アゴタ・クリストフの『昨日』を読み終える。幻想的な描写と、透明感のある「希望の無さ」に満ちていて、165頁の短い本だけど、読み終えるのが勿体なくて、同じ箇所を何度
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