日記、メモ/由比良 倖
何度も読み返しながら、一週間かけて読んだ。アゴタ・クリストフと言えば『悪童日記』三部作でかなり有名なのに、その次に書かれた『昨日』は日本では既に絶版だ。多くの読書家に読まれるべき本なので、再版して欲しいと思う。682円の文庫本を、僕は中古で533円(送料込み)で買った。とても綺麗な状態で届いたのだけど、物語の最終行の「。」の隣りに、パステルカラーっぽいオレンジ色のボールペンで、小さく「2022/7/19」と書かれていた。おそらくこの本の前の持ち主が、読了した日にちを書き込んだのだろう。女性らしい筆跡だけど、男性かもしれない。あるいは筆跡だけは可愛らしい、偏屈で生真面目なお爺さんかもしれない。書き込
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