三文芝居の夜/ホロウ・シカエルボク
思いつかないせいさ―人生にある種の確信を得ている連中の頭の中に在るのは、自分以外の誰かがこしらえたスローガンだ、文化体育館の前に掲げられた健全な精神がどうのこうのという垂れ幕を見ながらそんなことを考えた、それがどんな時代だろうと同じことだ、自分の言葉を隠してしまうことが美徳だと考える人間は大勢居る、まあ、俺にはなんの関係もない話だけどね、時折思い出したみたいに雨粒がひと時パラついてはあっという間に消えてしまう、服が濡れてしまうほどの雨ではないから傘を買わないままでいる、どこに行くという考えはない、家に帰ったら詩を書こうと思っている、詩なんかもうとっくに失われた、世間に詩情なんかもう存在しない、書き
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