のらねこ物語 其の三「イワシ」/リリー
間物屋を営んでいた
茂六さんの忘れ形見
彼はいつも 鰯料理で一杯やるのが好きだった
昨冬の明朝に厠で倒れて
それきりポックリ亡くなってしまったのだ
身寄りも無く 茂六さんの人柄を知る長屋の人達が
面倒みるようになった 地域猫
「女中頭の手前、言えないじゃない。」
おきぬさん、郷里にいた十歳の子供
二年前に病で亡くしてるから
今も元気のないイワシの気持ち分かるのよ。
「おきぬさんって、顔に似合わず優しいところもあるのね。」
「面白いところもあるわよ。」
この間、奥様が風邪をひかれてお医者様が来られた時、
寝間
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